「それもそうだな。再度洗い出してみる」

 天佑は頷く。

(敢えて言うなら、蓮妃様だけど……)

 潤王は蓮妃を寝所に召しても夜伽は求めていない。今日の様子を見る限り、蓮妃は実家から後宮での暮らしを尋ねられたら素直にそれを話しているだろう。恐らく、父親も蓮妃が仮初めの妃にすぎないことに気付いているはずだ。

「天佑様。蓮妃様のご実家の明家はどんな家門ですか? もちろん、事前の資料で鴻臚寺(こうろじ)卿であることは知っておりますが、人となりを知りたいです」

 鴻臚寺とは主に諸外国からの使節団の対応を行っている部署で、鴻臚寺卿はそのトップだ。

「明氏の?」

 天佑はすぐに玲燕の懸念していることに気付いたようで、顎に手を当てる。

「私も直接一緒に仕事をしたことはないのだが、一緒に仕事した者からは真面目で実直なお方だと聞く」
「そうですか……」

 となると、娘が皇后になれない可能性が高いことを察して鬼火騒ぎを起こすとは考えにくい。やはり、犯人は後宮にいる妃達とは関係のない家門の者だろう。

 だが、玲燕にはひとつ気になることがあった。