「お陰様で。天佑様は?」
「変わらないな」

 その言葉尻に『鬼火事件の犯人捜しも進展がない』という意味を感じ取る。

「……今日、蓮妃様から色々と面白い話を聞きました」
「面白い話?」
「はい。凧揚げ大会の話や、陛下の夜伽(よとぎ)の話、それに陛下主催の宴席で梅妃様と蓮妃様が喧嘩されたという話です」
「あの事件か」

 天佑はその宴席でのことを思い出したのか、苦虫を噛みつぶしたかのような顔をする。

「蘭妃は気が強いきらいがあって、同じく気が強い梅妃とはウマが合わない」
「まあ、ここは後宮ですからね。多少のいがみ合いは致し方ないのでは? ただ、蓮妃様のお話では、陛下は四人の妃を平等に寝所にお召しになっているとか。それは事実ですか?」

 玲燕は天佑に確認を求める。

「ああ、その通りだ。全ての妃を順番に召している」
「それならば、やはり後宮に入宮している妃の方々の関係者は鬼火事件とは関係ないのではないかと思いました。誰もが皇子を生み皇后となる可能性も持っているのに、潤王を失脚させる理由がありません。ですので、現時点で一族の娘を入宮できていない一族を中心に洗うべきかと思います」