「梅妃様と蘭妃様が?」
「ええ。ちょうど会場に入ろうとしていた梅妃様と、あとから来た蘭妃様と鉢合わせしてしまって。梅妃様は一番最初に後宮に入宮されているから後宮での発言力は強いけれど、ご実家の身分で言うと一番上は蘭妃様だから──」
蓮妃はそこまで言うと、当時を思い出すように眉を寄せる。
「多分だけど、蘭妃様は梅妃様を怒らせて面白がっていたわ」
「面白がっていた?」
「うん。あのふたり、仲悪いもの」
蓮妃はきっぱりと断言する。
「そうなのですか?」
「ええ。険悪な雰囲気に気付いた桃妃様が仲裁しようとしたけれどお二人から逆に睨まれて、困り果てていたわ。菊妃様も、梅妃様と蘭妃様にはあまり近づかないほうがいいわよ」
「肝に銘じておきます」
玲燕は相づちを打ちながら頷く。きっと、先ほど蓮妃が言っていた『すれ違っても挨拶も口もきいてくれない人』とは梅妃か蘭妃のどちらかなのだろう。
鬼火騒ぎの犯人捜しには関係なさそうだが、後宮内での身の振り方を知る上ではとても重要な情報だ。
その日の夕方、約一週間ぶりに菊花殿に天佑がやって来た。
「変わりなく過ごしているか?」
「ええ。ちょうど会場に入ろうとしていた梅妃様と、あとから来た蘭妃様と鉢合わせしてしまって。梅妃様は一番最初に後宮に入宮されているから後宮での発言力は強いけれど、ご実家の身分で言うと一番上は蘭妃様だから──」
蓮妃はそこまで言うと、当時を思い出すように眉を寄せる。
「多分だけど、蘭妃様は梅妃様を怒らせて面白がっていたわ」
「面白がっていた?」
「うん。あのふたり、仲悪いもの」
蓮妃はきっぱりと断言する。
「そうなのですか?」
「ええ。険悪な雰囲気に気付いた桃妃様が仲裁しようとしたけれどお二人から逆に睨まれて、困り果てていたわ。菊妃様も、梅妃様と蘭妃様にはあまり近づかないほうがいいわよ」
「肝に銘じておきます」
玲燕は相づちを打ちながら頷く。きっと、先ほど蓮妃が言っていた『すれ違っても挨拶も口もきいてくれない人』とは梅妃か蘭妃のどちらかなのだろう。
鬼火騒ぎの犯人捜しには関係なさそうだが、後宮内での身の振り方を知る上ではとても重要な情報だ。
その日の夕方、約一週間ぶりに菊花殿に天佑がやって来た。
「変わりなく過ごしているか?」