天佑はにこりと笑って逆に問いかける。
すると、少年は少しだけ首を傾げた。
「理由は三つある。第一に、あんたの足元。靴が全く汚れていない。この辺で働く下級役人の靴が全く汚れていないなんて有り得ない。普段、道の整った場所に住んでいて、ここまで靴を汚さずに来られるということだ。道が整った場所として考えられるのは、都だな。第二に、あんたが着ているのは官服だ。それにその色。淡い青色はかなりの高位だろう? ……察するに、文官だな。第三に、錬金術師の知恵を借りたいなんて言い出す役人なんぞ、政治舞台の高みを狙う食わせ者が殆どだ。うさんくさいことこの上ない」
天佑は目を瞬かせる。
(なかなか鋭い洞察力だな)
こんな片田舎でこの衣装が官服だと認識し、さらに帯銙で品位を認識できるとは驚いた。
この国、光華国では官史の身分が十に分かれており、その身分の高さによって、また、職種によって官服の色や帯銙の種類が違う。
天佑が今着ている青色は、人事関係を取り仕切る吏部のものだ。