「それにしては鬼火の位置が高すぎる。一番高い目撃情報は、十メートル近く上だ。そんな釣り竿を持ち歩く人間がいれば、すぐに誰かが気付くはずだ」
「それもそうですね。周囲に背の高い建物か木があったということは?」
「俺もそれを疑って何カ所か確認したが、周囲には何もなかった」
「何も? どの場所も何もなかったということですか?」
「そうだ」

 天佑は頷く。

「……そうですか」

 玲燕は今さっき手渡された資料をぱらりと捲る。

 ゆらゆらと揺れる鬼火も、目撃場所が川沿いに集中しているのは同じだ。玲燕が鬼火を目撃した日以降も、二件ほど目撃情報が寄せられていた。

「それと、玲燕から頼まれたとおり、前回渡した各家門の情報をさらに詳しく調べたものも後ろに載っている。……これでいいか?」
「はい。まずはこれで十分でございます」

 玲燕は頷いた。思った以上に早い情報収集に、感謝する。

「では、俺は戻る。また定期的に会いに来るよ」
「はい。あっ」
「どうした?」

 立ち上がりかけた天佑は動きを止め、玲燕を見る。

「……私から天佑様に会いたいときはどうすれば?」