「まあ、鈴々を付けているからその辺は心配していないが、気をつけることだな」

 天佑は茶碗を机に置く。

(どうして『鈴々を付けているから心配していない』なのかしら?)

 不思議に思ったものの、玲燕が聞き返す前に天佑が話題を変える。

「さて、本題だ。これを玲燕に」

 玲燕は天佑が差し出したものを見る。分厚い資料だ。中身を見なくとも、今回の鬼火騒ぎに関するものだろうと予想が付く。

「再度これまでの目撃情報を元に調査を行った。鬼火が素早く横切ったという証言がある場所のいくつかから、玲燕が見つけたのと同じ棒が新たに見つかっている」
「逆に、それ以外の場所からは見つかっていないということですね」
「ああ、そうだ」

 天佑は頷く。
 それは即ち、ゆらゆらとひとつの場所に留まっている鬼火が目撃された場所では玲燕が解明した方法とは別の方法で鬼火を熾していることを意味する。

「……例えば、釣り糸に鬼火をぶら下げて人が持っているということは考えられないでしょうか?」