「算木? 見つかったのか?」
「いえ。『二』が見つかりません。廊下から中庭に降りて探したのに」
玲燕は首を横に振る。
地面を見回しても、算木はひとつしかなかった。
「場所はどこだ?」
「菊花殿から内侍省に向かう途中、梅園殿の手前にある小さな庭園の辺りです。椿の木がある──」
「あそこか。では、もし拾ったという知らせを受けたら、玲燕に届けよう」
天佑は言葉を止め、玲燕を見つめて口の端を上げる。
「なかなか自由に歩き回っているようではないか」
「出歩くなとは言われておりませんので」
「女官達もまさか菊妃本人がぷらぷらと歩き回ってるとは思わないだろうな」
天佑はくくっと笑う。
「幽鬼に憑かれたのではないかと噂が立ちそうだ」
「既に、変わり者の錬金術妃だという噂は立っているようです」
鈴々が口を挟む。
「錬金術妃か。いかにも玲燕にぴったりな名だな」
天佑は楽しげだ。
「全て天佑様のせいですよ!」
玲燕は口を尖らせる。
「悪い悪い」
天佑は鈴々が淹れたお茶を飲む。
会話が一段落したのを見計らい、鈴々が口を開いた。
「いえ。『二』が見つかりません。廊下から中庭に降りて探したのに」
玲燕は首を横に振る。
地面を見回しても、算木はひとつしかなかった。
「場所はどこだ?」
「菊花殿から内侍省に向かう途中、梅園殿の手前にある小さな庭園の辺りです。椿の木がある──」
「あそこか。では、もし拾ったという知らせを受けたら、玲燕に届けよう」
天佑は言葉を止め、玲燕を見つめて口の端を上げる。
「なかなか自由に歩き回っているようではないか」
「出歩くなとは言われておりませんので」
「女官達もまさか菊妃本人がぷらぷらと歩き回ってるとは思わないだろうな」
天佑はくくっと笑う。
「幽鬼に憑かれたのではないかと噂が立ちそうだ」
「既に、変わり者の錬金術妃だという噂は立っているようです」
鈴々が口を挟む。
「錬金術妃か。いかにも玲燕にぴったりな名だな」
天佑は楽しげだ。
「全て天佑様のせいですよ!」
玲燕は口を尖らせる。
「悪い悪い」
天佑は鈴々が淹れたお茶を飲む。
会話が一段落したのを見計らい、鈴々が口を開いた。