「すごいのね。陛下が『今度、錬金術が得意な錬金術妃が来るよ』って仰っていたのだけど、本当だわ」
「錬金術妃、ですか……」
玲燕は苦笑する。ずいぶんな渾名を付けられたものだ。
「それじゃあ、お願いしてもいい? 郭氏に聞こうと思っていたのだけど、玲燕様にお願いするわ」
そこまで言うと、蓮妃はふと言葉を止める。
「それにしても、どうして幽客殿を希望したの? 怖くないの?」
「幽客殿?」
「菊花殿のことよ。だって、あそこは幽鬼が出るってみんなが言っているわ」
「幽鬼……」
玲燕は目をぱちくりとさせる。
天佑は『目立たないように後宮の端にある殿舎にした』とだけ言っていた。幽鬼の話は一切聞いていない。
(まあ、いいわ)
そもそも玲燕は幽鬼の存在をあまり信じていないので気にならないし、幽鬼が出るという噂が立っている殿舎であれば他の妃も寄りつきにくいので好都合だ。
「怖くないの?」
おずおずとした様子で蓮妃は玲燕を見つめる。
「大丈夫ですよ。私、あいにく幽鬼は見えませんので」
玲燕はにこりと微笑んだ。
その日の夕刻、菊花殿に内侍省から使いがきた。
「錬金術妃、ですか……」
玲燕は苦笑する。ずいぶんな渾名を付けられたものだ。
「それじゃあ、お願いしてもいい? 郭氏に聞こうと思っていたのだけど、玲燕様にお願いするわ」
そこまで言うと、蓮妃はふと言葉を止める。
「それにしても、どうして幽客殿を希望したの? 怖くないの?」
「幽客殿?」
「菊花殿のことよ。だって、あそこは幽鬼が出るってみんなが言っているわ」
「幽鬼……」
玲燕は目をぱちくりとさせる。
天佑は『目立たないように後宮の端にある殿舎にした』とだけ言っていた。幽鬼の話は一切聞いていない。
(まあ、いいわ)
そもそも玲燕は幽鬼の存在をあまり信じていないので気にならないし、幽鬼が出るという噂が立っている殿舎であれば他の妃も寄りつきにくいので好都合だ。
「怖くないの?」
おずおずとした様子で蓮妃は玲燕を見つめる。
「大丈夫ですよ。私、あいにく幽鬼は見えませんので」
玲燕はにこりと微笑んだ。
その日の夕刻、菊花殿に内侍省から使いがきた。