(何だ?)
あまりの音の大きさに、天佑はビクンと肩を揺らす。何事かと恐る恐るそちらを見つめると、「あいたたた……」と小さな声がした。
「大丈夫か?」
「問題ない。立ち上がろうとした拍子に、絶妙のバランスを維持していたこの山に触れただけ」
ガラクタの山から高い声がした。
目を凝らしてよく見れば、今さっき豪快な音を立てて崩れ落ちた木と金属の屑に埋もれて、小柄な男の影があった。
背中の途中までの長さの黒髪は艶があり、後ろでひとつに結ばれている。白い袖口から覗く黒く薄汚れた手足は棒きれのように細い。
座っていても女ほどの体格しかないことはすぐにわかった。まだ少年だ。
少年は立ち上がると、服についたほこりをはたき落とす。
「驚かせて悪かった。それで、どんなお困りごとで?」
何事もなかったようにそう言った少年は、天佑を見る。
しかし、次の瞬間には顔から笑みを消し、困惑の表情を浮かべた。
「……あんた、都のお偉いさんだな? 都のお偉いさんがこんなところになんの用だ?」
「なぜ私が都から来たお偉いさんとわかるんだい?」