足を引っかけた女官はくすくすと笑う。そして、床に落ちたものを拾い上げた。

「どれどれ……あら。何かしら、これ?」

 てっきり宝石などの宝飾品か衣が入っていると思っていたのに、散らばったのはただの木片だった。四角柱の形状をしており、それぞれに異なる模様がいれられたものがいくつもある。

「ああっ。大切な算木が!」

 少女は顔を上げ、周囲に散らばった木片を見て青ざめた。

「……算木?」

 女官達は目を瞬かせる。
 必死に木片を集めている少女の姿を見て少し気の毒になり、いくつかを拾って少女に手渡す。

「ありがとうございます。助かりました」

 少女はぺこりと頭を下げた。

「いいわ。それより、これは何?」
「これは見ての通り算木でございます。とても大切な品物でございます」

 少女は得意げな顔をしてそれを見せる。

「算木……」

 女官達はぽかんとした顔でその木片を見つめる。もしかして、これは特別な算木なのだろうか。

「何に使うの?」
「何って、もちろん算術です」
「高いの?」
「いえいえ。銅貨二枚あれば買えます」
「あ、そう」