光麗国史上最も若くして官僚になるための試験を突破した秀才で、現皇帝である潤王の覚えもめでたい。さらにその見目は非常に整っており、少し切れ長の瞳にすっきりとした高い鼻梁、薄い唇、キリッとした眉が黄金比に並んでいる。
時折妃達を楽しませるために催される宴席に呼ばれる演劇の芸人ですら、彼の前では霞むほどだ。
「親戚ってこと? じゃあ、すごい美人なのかしら。だって、弟の栄佑(えいゆう)様もすごく素敵じゃない?」
「さあ? でも、きっと変わり者だわ。殿舎が幽客殿らしいもの」
「幽客殿!?」
それを聞いた女官は驚きの声を上げる。
「ええ。それも、自分で希望したらしいわよ」
説明する女官は、声を潜める。
幽客殿とは、この後宮でも最も外れに位置する殿舎──菊花殿の別名だ。
後宮は今も昔も、どろどろとした愛憎劇に事欠かない。
今から十五年ほど前、ときの皇帝の寵を失ったと知ったひとりの妃が自害した。それだけであればよくある話なのだが、そのあとからその妃が住んでいた殿舎──菊花殿からおかしな物音が聞こえるようになった。
時折妃達を楽しませるために催される宴席に呼ばれる演劇の芸人ですら、彼の前では霞むほどだ。
「親戚ってこと? じゃあ、すごい美人なのかしら。だって、弟の栄佑(えいゆう)様もすごく素敵じゃない?」
「さあ? でも、きっと変わり者だわ。殿舎が幽客殿らしいもの」
「幽客殿!?」
それを聞いた女官は驚きの声を上げる。
「ええ。それも、自分で希望したらしいわよ」
説明する女官は、声を潜める。
幽客殿とは、この後宮でも最も外れに位置する殿舎──菊花殿の別名だ。
後宮は今も昔も、どろどろとした愛憎劇に事欠かない。
今から十五年ほど前、ときの皇帝の寵を失ったと知ったひとりの妃が自害した。それだけであればよくある話なのだが、そのあとからその妃が住んでいた殿舎──菊花殿からおかしな物音が聞こえるようになった。