◆ 第二章 偽りの錬金術妃


 光麗国の王都、大明にある巨大な城郭──麗安城。
 皇帝の住む宮城、政が行われる皇城、そして人々が暮らす外郭城からなるここは、一辺の長さが数十キロにも及ぶ巨大な城だ。
 そして宮城の一角にある後宮で、女官達が世間話に花を咲かせていた。

「今度のお妃様はどんなお方なの? 随分と急に話が降って湧いたわよね」
「それが、ほとんど情報がないのよ。なんでも、甘天佑様ゆかりの姫君だとか?」
「甘天佑様の?」

 女官は驚いて声を上げる。

 ここに勤めている女官で、甘天佑の名を知らぬ者はいない。