今回の鬼火騒動で、民は『皇帝にふさわしくない潤王が即位したことにより、天帝がお怒りになっている』と噂した。玲燕の言うとおり、現皇帝の在位を面白く思わない反皇帝派の仕業である可能性は極めて高い。

「そうは思うのだがね。なかなか特定が難しいのだよ」
「特定が難しい?」

 玲燕は訝しげに聞き返す。

「ああ。対象者がとても多い」

 低位の妃から生まれた潤王の即位を面白く思っていない貴族は、両手で数えきれないほどいる。特定が難しいというのは事実だった。
 玲燕は考えを整理するようにじっと黙り込む。そして、しばらくの沈黙ののちにようやく口を開いた。

「乗りかかった船ですので協力するのは構いませんが、反皇帝派の人間関係を全く知らない私にそれを推理することは極めて困難です」
「それもそうだな。玲燕に知識として人間関係を教えることは可能だが、それだけでは不十分だろう」
「ええ、できれば直接話す機会までいただけますと幸いです」

 玲燕は頷く。

「どうするかな。疑わしきは皆、有力貴族だ。下手につつくと思わぬ大火災になる」
「そこをなんとかするのが天佑様の役目でしょう?」