「鬼火の謎も明らかになったことですし、これで私の役目は終わりということでよろしいでしょうか?」

 玲燕は涼やかな眼差しで、天佑を見つめる。
 凜としていながらも少し幼さの残るその眼差しを見たとき、天佑はなぜか胸を打たれるような衝動を感じた。

(この娘を手放してはならない)

 本能的に感じたのは、多くの部下を束ね人を見る吏部侍郎という立場にいる直感かもしれない。天佑はすらすらと鬼火の謎を推理してゆく玲燕の姿に、半ばわくわくするような高揚感すら感じたのだ。

「まだだ」

 天佑は首を振る。

「できれば玲燕には、誰がこのようなことをしでかしたのか、犯人までみつけてほしい。それに、ゆらゆらと空で留まる鬼火の謎も。ああ、もちろん、ここで一旦、約束の謝礼は支払う」
「犯人は反皇帝派の貴族ではないのですか? ゆらゆらと空で留まる鬼火は、犯人を捕らえれば証言が得られましょう」

 玲燕は眉間に皺を寄せ、天佑を見返す。