「天佑様に『炎が黄色や緑色だった』と聞いたとき、私はすぐに鬼火は塩分や銅を配合した炎であることを疑いました。そして、実際に鬼火が現れたのを見たとき、鬼火の軌跡が美しい放物線を描いていることに気付きました。放物線は、とある物を投げたときにその物が描く軌道として、特徴的な形状です。即ち、『何らかの細工をした炎を何者かが投げ、水に着地して消えている可能性が高い』と推測したのです」
「それで、証拠となる品がないかを翌日の早朝に探しに行ったというわけか?」

 天佑はようやく今朝の玲燕の行動の意味を理解した。

「はい。川は流れがあります故、すぐに見つかるとは思っていなかったのですが、浅い上に流れがほとんどない川であることが幸いしました」

 玲燕は表情を変えずに頷く。

「玲燕の推理に基づくと、これまでにも鬼火が目撃された場所には同じような棒が落ちているはずということだな?」
「そう思います。現場が水辺に集中していたのは、まわりに民家があることを嫌ったものでしょう。火災になっては大変ですから」