天佑はその箸を受け取ると、煌々と明かりの点される庁堂へと移動する。明るいところで見ると、その箸に詰められた綿には何か交じっているように見えた。

「なんだこれは? 濡れているが……それに、何が交じっている」
「こちらの綿には燃えやすいようにアルコールを染み込ませて、これと同じ成分をまぶしております」

 玲燕は財布を取り出し、そこから硬貨を一枚取り出す。

「銅貨?」
「はい、そうです。こちらは銅でございます」

 玲燕は銅貨をピンと指先で投げ、落ちてくるそれをパシッと掴んだ。

「あまり一般的には知られておりませんが、炎の色は混じり合う金属の成分で多種多様に変化します。銅が混じり合うと緑色に炎の色が変わることは鍛冶職人などにはよく知られた事実です。黄色は、塩分が交じった汁物を零したときなどによく見られる炎の色です」

 玲燕は説明しながら、天佑が手に持つ二本の棒を見つめる。