玲燕が差し出したそれをよく見ると、先っぽの先端が空洞になっており、焦げた布のようなものが巻き付いていた。松明に形が似ているが、それにしては細すぎる。

「なんだ、これは? 松明に形は似ているが……」
「これこそが、あやかし騒ぎの正体ですよ」

 玲燕はにんまりと口元に弧を描いた。

「鬼火の謎、解けました」


   ◇ ◇ ◇


 その日の晩、天佑は玲燕に呼ばれ、屋敷の中庭に向かった。
 灯籠が点された中庭には既に玲燕がおり、彼女のわきには水の張った大きな盥が置かれている。

「これから何をする?」

 天佑は周囲を見回す。
 まさかここに鬼火を呼び寄せようというのだろうか。

「まあ、座ってください。あ、お願いした材料集めありがとうございます」

 玲燕は思い出したように、天佑に礼を言う。
 今朝、玲燕に色々と材料を集めてほしいと言われたのだ。

「早速ですが、こちらをご覧ください」

 玲燕は天佑の前に、一本の箸を差し出す。端には、今朝川で見つけたのと同じように窪みがあり、綿が詰めてあった。

「こちらに火を付けます」