隣に立つの天佑が固い声でそう言う。

(もう一度現れないかしら?)

 玲燕は鬼火が消えた方向をもっとよく見ようと、目を懲らす。

 しかし、すっかりと日が暮れている上に今日は二十七夜だ。視界の先は、漆黒の闇に包まれている。そして、頭上には天極の極星が瞬いているのが見えた。

 騒ぎを聞きつけた人が玲燕達以外にも集まってきて、周囲から「鬼火が現れたぞ」「天帝がお怒りだ」と叫ぶ声が聞こえてくる。

「想像したよりも動きが速いです」
「私が前に見たときは、もっとゆったりした感じだった。遠目にゆらゆらと、風に揺れるような……」
「そうですか」

 玲燕はじっと考え込む。
 鬼火は確かに現れ、緑色をしていた。

(……緑の火か)

「天佑様。明日、明るい時間にもう一度ここに来ても? それに、これまで鬼火が目撃された場所も」
「明日の明るい時間に? 明るい時間に鬼火が目撃されたことは、今まで一度もないが?」

 腑に落ちない様子で、天佑は聞き返す。

「はい、わかっております。確認したいことがあるのです」

 玲燕は流れる川を見つめながら、頷いた。