翌日から、玲燕はこれまでの鬼火の目撃情報を整理した。
 天佑から聞いたとおり、目撃されているのは水辺に集中しており、特に川沿いが多い。ただ、火によってどこに現れるかは異なり、規則性はなさそうだ。
 時刻は日が沈んだあとで、あたりに人気がないことが多い。
 そして色は通常の炎の色である橙色のほか、緑色や黄色だったという証言が多かった。
 ただ、一瞬で消え去ったと言う者もいれば、ゆらゆらと同じ場所に留まっていたと言う者もいるようだ。

(たしかにこれは、普通の鬼火ではないわね)

 玲燕は資料を見ながら唸る。
 とにかく、一度でもいいからその鬼火を見る必要がある。



 都である大明に来てから五日。
 この日も玲燕は、皇城と外郭城にまたがるように流れる巌路川の畔を天佑と共に歩いていた。鬼火を見るために、毎日こうして歩いているのだ。

「今日は現れるでしょうか」
「さあ、どうだろう。なにせ、川沿いと言っても範囲が広からね」

 天佑が言うとおり、ここ大明の城内はとても広い。