話を終えると、玲燕は小鉢に盛られた豚肉を箸で切って口に含む。何時間も煮込んで作ったであろうそれは、口の中でとろりと溶けて消えた。少しだけ冷えてしまっているが、それでも十分に美味しい。

「美味しい!」
「それはよかった」

 天佑はにこりと微笑む。

(この人、不思議な人ね)

 玲燕を見つめて目を細める様子は、とても優しそうな好青年にしか見えない。けれど、先ほどまでのやりとりを見るに、かなりの策士であることは想像が付く。

「どうした?」

 じっと顔を見つめてしまったので、不審に思われてしまったようだ。天佑は不思議そうに小首を傾げて玲燕を見返す。

「いえ、なんでもございません」

 玲燕は目を伏せると、黙々と食事をとる。
 小鉢に盛られた小魚を口にして、ふと手を止める。

(これ、懐かしい……)

 遙か昔、これと同じものがよく食卓に並んだ記憶がよみがえる。大明に流れる川──巌路(がんじ)川で採れた小魚の煮付けだ。

(水辺で鬼火か……)

 一般的に鬼火は墓地で見られることが多い。
 色々とこれが原因ではないかという推測は立つが、やはり実際に見てみないことには断定が難しい。