玲燕は潤王から尋ねられた褒美に、光琳学士院に錬金術師として勤めることを望んだ。今はまだ手続き中だけが、近い将来に朝廷に仕える錬金術師となる予定だ。
 そして、天佑は今も〝甘天佑〟と〝甘栄祐〟の一人二役をこなしている。今更本来の栄祐には戻れないし、潤王からも一人二役しているほうが何かと勝手がいいと言われたようだ。

「いつか、天嶮学士になりとうございます。なれるかどうかはわかりませんが、目指してみようかと」

 玲燕は、幼い日に見た父を思い出す。父の開く私塾に紛れ込んでは門下生と肩を並べ、父のような錬金術師になりたいと夢見た。

 それを聞いた栄祐は、口元を優しく綻ばせた。

「それもいいかもしれないな。──今はまだ」
「え?」

 ざっと強い風が吹き、玲燕は髪の毛を抑える。風のせいで栄祐が最後になんと言ったのか、よく聞き取れなかった。

「今、なんと?」
「頑張れよ、と言った」
「はい。ありがとうございます」

 玲燕は微笑む。このようなチャンスをくれた栄祐には、心から感謝している。

「その日が来るのを、いつかお見せします。……栄佑様」

 栄祐は驚いたように目を見開く。