玲燕の話を聞き、朝議の会場は再び騒めく。この事件については、知っている者もいたが、知らない者もまだ多かったからだ。

「この事件の犯人ですが、様々な状況証拠から、私は昨日桃林殿で井戸の輪軸の交換工事をした男だと判断しました。彼は工事のどさくさに紛れて、井戸の中に毒入りの氷を落としましたのです。氷にしたのは、工事した時間と第一の被害者が出る時間に差を付けるためです。毒を直接入れればすぐに効果が現れてしまい、犯人妥当違われてしまいます。しかし、氷にしておけば溶け出すまでに時間がかかりますから、数時間の時間差を生むことができます」

 周囲から、「なるほど」という声とともに、「なぜ工事の男がそんなことを?」という至極真っ当な疑問の声が聞こえてきた。

「なぜこの男がこんなことをしたのか、とても不思議ですね。それについて、これからお話ししましょう」

 玲燕は周囲を見回す。誰もが固唾を呑んで、玲燕の次の言葉を待っていた。