両親が健在な頃は実家に立派な天文図があった。極星を中心として、放射線状に二十四の宿が広がり、様々な星座が描かれたものだ。

「天文図なら、屋敷にあった気がするな。今度、持ってこよう」
「ありがとうございます」

 墨を垂らしたような空に広がる満天の星は、かつて父から星座を学んだときと同じ輝きを放っている。

「今宵も囲碁を?」
「はい。でも、私が勝ちそうになったら陛下が碁石を全て床になぎ落としてしまったのです。とんでもない負けず嫌いです」
「ははっ」

 天佑は肩を揺らして笑う。
 その横顔を見ていたら、玲燕までなんだかおかしくなった。



 
 菊花殿に戻ると、鈴々が寝ずに待っていてくれた。

「こんなに遅い時間なのに」
「そろそろ玲燕様が戻られると思ったので。予想通りでした」

 鈴々は眠さを見せない笑顔で微笑む。その心遣いに気分がほっこりする。

「もう遅いですので、すぐにお休みください」
「うん、ありがとう」

 玲燕は素直に頷き、寝台に横になる。灯籠の明かりで、部屋の中はぼんやりと照らされていた。

 ふと、まっすぐに見上げた天井に走る梁が見えた。