そして、どうして潤王が使っていた酒杯を入れ替えたのか?

(……もしかして、最初から潤王を殺す気などなかったのでは?)

 ふと、そんなことを思った。
 そう考えると、見え方が一八〇度変わってくる。

 犯人は潤王を最初から殺す気などなく、混入がばれることを見越して毒を混ぜた。そして犯人として疑われたのは桃妃とその女官だ。

(逃妃に罪をかぶせて、妃の座から引きずり下ろしたかった?)

 だとすれば、怪しき人物が変わってくる。
 懐妊している可能性がある桃妃がいなくなって得する人間の筆頭は、梅妃、蘭妃、蓮妃の三人だ。そして、翠蘭の酒器にだけ毒を混入できたのはたった一人だけ……。

(もしかして、犯人は──)

 黙り込んでいると、「聞きたいことはそれだけか?」と潤王の声がして玲燕はハッとした。
 気付けば、潤王がこちらをじっと眺めている。

「いえ! では、あとふたつほど」
「ふたつ? 質問攻めだな」

 潤王はハッと笑う。
 迷ったももの、玲燕は今さっき思いついた推理を潤王に話すのはやめることにした。全てが想像なので、証拠固めが必要だ。