ここ光麗国の都、大明(たいめい)であやかし騒ぎが起こったのは数ヶ月前のこと。
夜になると、城内の皇城と呼ばれる官庁区や、外郭城と呼ばれる居住区や商業区において、度々鬼火が目撃されるようになったのだ。
それを見た市民は恐怖や不安を覚え、不吉なことが起る兆しだと騒ぎだした。
現皇帝は二年前に即位したばかりの潤王(ジュンオウ)だ。
光麗国では、後宮に入るための身分は問われない。
潤王は下級貴族の娘が産んだ皇子で、本来であれば皇帝などになりようがない身だった。しかし、数年前に大明で肺の病が大流行したときに上の皇子達が次々と亡くなり、母の故郷に身を寄せていて難を逃れた潤王に皇帝の座が回ってきた。
そのため、人々は皇帝に相応しくない人間が皇位を得たので天帝が怒り、地上に鬼を遣わしたに違いないと噂しているのだという。