「今回の毒物混入の事件に関してです。事件の際、陛下はお酒を飲もうとして何か変化を感じましたか?」
「いや、感じなかった。匂いも見た目も普通の酒だったな」
「口を付けようとしたところ、黄連泊様がそれを阻止された?」
「ああ、そうだ」
「酒を注いだのは、桃妃様付きの女官──翠蘭様で間違いありませんか?」
「名前までは知らぬ。ただ、女官が黄に突き飛ばされた際に桃妃が慌てた様子を見せて『翠蘭!』と叫ぶのを聞いた」
「なるほど。よくわかりました」

 玲燕は相づちを打つ。

 当時の状況はもう数え切れないほど聞いたが、目新しい情報はなさそうだ。

「では、次の質問をさせてください。桃妃様は最近どんなご様子ですか?」
「桃妃? 知らんな」

 潤王は興味なさげに首を振る。
 その態度に、玲燕はピンときた。

(嘘をついているわ)

 桃妃は潤王暗殺事件の重要な容疑者のひとりだ。何をしているか、逐一潤王のところに報告が入るはず。それなのに知らないなど、あり得ない。

「以前、宴会で体調を崩されたと聞きました。もう体調は大丈夫でしょうか」
「何も聞かないから、大丈夫なのだろう」