「笑顔が出るようになってよかったよ」
「……それはどうも」
気に掛けてくれていたのだろうか。
胸がむずがゆいような、不思議な感覚がする。
「あ、そういえば」
なんだか気恥ずかしく感じ、玲燕は話題を変える。
「天佑様は光琳学士院にいらしたのですね。先ほど、書庫で昔の人事配置表を見ました。どんな研究を?」
玲燕は天佑の横顔を窺う。
(あれ?)
一瞬強ばったように見えたのは気のせいだろうか。
「忘れた」
「忘れた? 全部?」
「体調を崩してから、記憶が曖昧なんだ」
「体調を……」
確か以前一緒に礼部を訪れた際、天佑は旧友である李雲流から体調を気遣われていた。彼がシンパ下のと同じ体調不良だろうか?
「それは……、今は大丈夫ですか?」
「ああ。だが、毎日が忙しすぎる」
「それはそうでしょうね……」
ひとつの役職であっても目が回る忙しさのはずなのに、ひとり二役しているのだから忙しいのは当たり前だ。
「では、しっかりと休憩しないと。茶菓を食べましょう!」
「そうだな」
ぐっと胸元で力こぶを作った玲燕を見て、天佑が笑う。
その表情が少し寂しげに陰ったことには、とうとう気がつかなかった。
「……それはどうも」
気に掛けてくれていたのだろうか。
胸がむずがゆいような、不思議な感覚がする。
「あ、そういえば」
なんだか気恥ずかしく感じ、玲燕は話題を変える。
「天佑様は光琳学士院にいらしたのですね。先ほど、書庫で昔の人事配置表を見ました。どんな研究を?」
玲燕は天佑の横顔を窺う。
(あれ?)
一瞬強ばったように見えたのは気のせいだろうか。
「忘れた」
「忘れた? 全部?」
「体調を崩してから、記憶が曖昧なんだ」
「体調を……」
確か以前一緒に礼部を訪れた際、天佑は旧友である李雲流から体調を気遣われていた。彼がシンパ下のと同じ体調不良だろうか?
「それは……、今は大丈夫ですか?」
「ああ。だが、毎日が忙しすぎる」
「それはそうでしょうね……」
ひとつの役職であっても目が回る忙しさのはずなのに、ひとり二役しているのだから忙しいのは当たり前だ。
「では、しっかりと休憩しないと。茶菓を食べましょう!」
「そうだな」
ぐっと胸元で力こぶを作った玲燕を見て、天佑が笑う。
その表情が少し寂しげに陰ったことには、とうとう気がつかなかった。