「ところで、今日は見たいものがあってわざわざこちらに来たのだろう?」
「あ、はい。そうです」

 天佑に聞かれ、玲燕は頷く。

「では、案内する」

 天佑は少しだけ戸をずらし、外の様子を窺う。近くに人がいないかを確認しているのだ。

「よし、行こう」

 手招きされ、玲燕は天佑のあとを追う。

「天佑様。先ほどのご老人は一体どなたですか?」
「あれは、光琳学士院の李老子だ」
「李老子……。もしかして、錬金術師の李空様ですか」
「ああ、そうだ」

 天佑は頷く。

(あれが、李空様……)

 以前、鬼火事件の真相を追っている際に天佑から名前を聞いたことがある。
 李空は現在の光琳学士院で最も権威ある錬金術師であり、鬼火事件は錬金術では解明できないと言い切った人物だ。

(光琳学士院で務めることができるほどの錬金術師が集まりながら、なぜあの鬼火事件が解明できなかったのかしら)

 当時のことを思い返し、玲燕は改めて疑問を覚える。