老人が天佑に尋ねる。
 その口調は高圧的で、天佑を下に見ていることが透けて見えた。一方の、天佑の態度は極めて冷静で落ち着いていた。

「どういうつもりか、とは?」
「あの、菊妃のことだ。錬金術が得意だとか抜かし陛下の興味を引き、力比べ大会では傍若無人な振る舞いをしたとか。なんでも、甘家ゆかりの娘らしいな」

(私の話をしている?)

 菊妃と聞こえてきて、玲燕は耳をそばだてる。

「はい。ふと話の流れで彼女のことを陛下にお話ししたところ、女人で錬金術を嗜むのは珍しいと陛下がひどく気に入られまして。今は、とても寵愛しております」

 天佑はあたかも事実であるかのように、そう答える。すると、老人はわかりやすく顔をしかめた。

「噂では、自分は天嶮学を学んだと公言したとか」

 探りを入れるように老人は天佑を見つめる。

「我らが天嶮学によりどんな目に遭ったのか忘れたのか? 私がなんとかしなければ、光琳学士院の存続危機だった。甘家ゆかりの娘ならば、余計なことをしないように進言すべきだ」
「進言しようにも、会う機会もありません」
「弟がいるだろう!」

 老人が声を荒立てる。