「手が冷たい。冷え切っているではないか。早く中に入れ」

 ぎゅっと手を握られたまま、半ば無理矢理に部屋の中へと放り込まれた。
 鈴々が火鉢を用意しておいてくれたようで、室内はとても暖かかった。

(暖かい)

 すっかりと冷え切った体に、この暖かさはありがたい。玲燕は火鉢に手をかざし、指先を温めた。パチパチと炭が燃える音が微かに聞こえる。

「今日はとても冷えますね」
「そうだな。雪が舞うほど冷え込むのは珍しい」

天佑も外に立っていたので体が冷えていたのだろう。玲燕と同じように、火鉢に手をかざす。

「それで、一体どこで誰と、何をしていた?」
「回廊でたまたま蓮妃様にお会いして、殿舎にご招待いただきました」
「蓮妃様に?」
「はい。久しぶりに会ったので、色々と話したいことがあると」
「……そうか。それで、何の話を?」
「主には、天佑様のおっしゃていたあの事件の話をされておりました」
「何か気になる情報は得られたか?」
「現段階では、犯人は翠蘭であるとされても致し方ないということがわかりました」
「それでは玲燕を呼んだ意味がないではないか」

 天佑は呆れたように、玲燕を見る。