大げさに肩を竦める蓮妃を見つめ、玲燕は苦笑する。
 その現場は見ていないが、大いに盛り上がる女官達の様子は想像が付いた。

「……菊妃様、お話を聞いてくれてありがとう」
「いえ。私などでよければ、いつでもお聞きしますよ」

 玲燕は菊妃に、にこりと笑いかけた。



 菊花殿に戻る最中も、玲燕は歩きながらじっと思考に耽っていた。

(とても難しい事件だわ……)

 はっきり言って、状況証拠が揃いすぎている。これでは翠蘭の犯行以外に疑う余地がない。しかし、動機がなんなのかがはっきりしないし、桃妃が後ろで糸を引いたというのもどうにも納得いかない。

 そのとき、視界の端に白いものが舞い落ちるの見えた。

(雪? どうりで冷えるはずだわ)

 ひとつ、またひとつと庭園の地面へと雪が舞い落ちる。
 回廊からは、ちょうど庭園のひとつが見えた。手入れされた木々が美しく配置されている。

 ぼんやりと景色を眺めていると「あらまあ、珍しい人がいること」と声がした。