「それで、輪軸は交換できたのですか?」
「ええ。梅妃様のご実家であられる黄家が手配し直したの。香蘭殿以外はそれで交換してもらったわ」
「香蘭殿は交換しなかったのですか?」
「ええ。蘭妃様が『わたくしは元の工事人でよい』と仰ったみたいで」
「……なるほど」
以前会った蘭妃のあの様子からするに、蘭妃は梅妃に世話になることが許せないのだろう。玲燕は苦笑いする。
「あとは──」
蓮妃が口を開く。
「まだあるのですか?」
玲燕は驚いた。
潤王暗殺事件に輪軸の交換事件。このふたつでも既にお腹いっぱいなのに、まだ何かあるとは。
たった三ヶ月なのに、随分とたくさん事件があったものだ。
「桃妃様が宴席中に体調を崩されたの」
「桃妃様が?」
玲燕は聞き返す。
桃妃は潤王の想い人であり、今回の潤王暗殺事件の重要な容疑者のひとりだ。その桃妃が体調を崩していたと聞き、玲燕は興味を持った。
「以前、陛下の計らいでちょっとした宴席が行われたの。寒椿の宴よりももっと前、後宮の中で行われた宴よ。だけど、そのときに桃妃様が急に体調を崩されてしまって」
「何かの病ですか?」