「うーん。あの日は本当に、上を下への大騒ぎだったから──。違和感も何も、大混乱よ」
蓮妃は肩を竦める。
「あの事件のあと、桃妃様には会えなくなっちゃって。菊妃様もいらっしゃらなかったから、本当に心細かった」
蓮妃はぽつりと呟くと、鼻をすする。
「私は戻りました。いつでも会えますよ」
「そうよね」
蓮妃は目元を指先で拭うと、口元に笑みを浮かべて皿に盛られた粉食をむんずと掴む。そして、それをおもむろに口に入れた。
「ところで蓮妃様。先ほど、『色々と事件があって』と仰っていたと思うのですが、他にも何か事件が?」
玲燕は蓮妃に尋ねる。天佑から聞いた事件は、この潤王の毒殺未遂事件だけだった。
「うん、あったわ。先日、後宮内に設置されている全ての井戸の輪軸交換の工事が行われる予定だったのだけど、梅園殿の工事をしようとした技師がへまをして梅妃様がひどくお怒りになられて──。その後の工事が見合わされたの」
「輪軸の交換?」
輪軸とは、少ない力で思い物を持ち上げるために利用される道具のことで、先の力比べ大会の際に玲燕が利用したのも輪軸だ。
蓮妃は肩を竦める。
「あの事件のあと、桃妃様には会えなくなっちゃって。菊妃様もいらっしゃらなかったから、本当に心細かった」
蓮妃はぽつりと呟くと、鼻をすする。
「私は戻りました。いつでも会えますよ」
「そうよね」
蓮妃は目元を指先で拭うと、口元に笑みを浮かべて皿に盛られた粉食をむんずと掴む。そして、それをおもむろに口に入れた。
「ところで蓮妃様。先ほど、『色々と事件があって』と仰っていたと思うのですが、他にも何か事件が?」
玲燕は蓮妃に尋ねる。天佑から聞いた事件は、この潤王の毒殺未遂事件だけだった。
「うん、あったわ。先日、後宮内に設置されている全ての井戸の輪軸交換の工事が行われる予定だったのだけど、梅園殿の工事をしようとした技師がへまをして梅妃様がひどくお怒りになられて──。その後の工事が見合わされたの」
「輪軸の交換?」
輪軸とは、少ない力で思い物を持ち上げるために利用される道具のことで、先の力比べ大会の際に玲燕が利用したのも輪軸だ。