(美味しい)

 お茶を一口飲むと、滑らかな甘さが口の中に広がる。自分がそんなに舌が肥えているとは思わないが、きっとこのお茶は最高級品であると予想が付いた。

「それで、さっきの話だけどね」

 蓮妃は少し身を乗り出し、口を開く。その様子に、玲燕がいない間に起きたという事件について早く話したくて堪らないのだろうと感じた。

「つい先日のことなのだけど、皇城の朱雀殿(すざくでん)で寒椿の宴が行われたの」
「はい」

 玲燕は相づちを打つ。

(やっぱり、その事件についての話なのね)

 寒椿の宴で潤王暗殺未遂事件。まさに、玲燕が天佑に解決を請われた事件だ。
 会場になった朱雀殿は皇城にいくつかある建物のひとつで、美しい庭園に囲まれた大広間があり、大人数の会議や宴会などによく使われる場所だ。寒椿も植えられている。

「後宮にいる妃も全員招待されたから、桃妃様も参加されたのよ。だから、その日はお付きの女官達もその場にいて、お酒をついだりしていたの。その最中、桃妃様の付きの女官がついだお酒に毒が入っていたって騒ぎが起きて……」