しかし、どことなく物寂しく感じるのは冬という季節のせいだろうか。天を見上げれば、どんよりとした雲が空を覆っていた。

「あら? 菊妃様? 菊妃様じゃない?」

 回廊を歩いていると、少し幼い女性の声がした。振り返ると、そこには驚いたように目を見開く蓮妃がいた。

「これは蓮妃様。お久しぶりですね」

 懐かしい人に、玲燕は表情を綻ばせる。

「やっぱり菊妃様だわ、久しぶりじゃない! 会いたかった!」

 蓮妃はパッと顔を明るくして、玲燕のもとに駆け寄る。十二歳という歳頃のせいか、たった三ヶ月会っていないだけなのに少し背が伸びたように感じる。

「その……ご実家のご家族の容態はもう大丈夫なの?」

 蓮妃は気遣うような目で玲燕の顔を窺う。

「え?」
「あの事件のあとに菊妃様の姿が急に見えなくなったから、私、心配してしまって。夜伽の際に陛下にお聞きしたら、『故郷にいる親の容態が芳しくなくて、故郷に戻っただけだよ』と仰っていたから」

(そんなことを言っていたのね!?)

 驚いた玲燕は、必死にそれを隠す。