「なんと無礼な! なんの証拠があってそのようなことを!」

 怒りに唇を震わせる高宗平は玲燕に飛びかかろうとする。右手が振り上げられるのを見て、玲燕はぎゅっと目を閉じた。

(……あれ?)

 来ると思っていた衝撃が来ないので、玲燕は恐る恐る目を開ける。
 目の前には、天佑が立っていた。高宗平との間に、玲燕を守るように立ち塞がり、まっすぐに高宗平を見据えている。

「菊妃様に手を挙げられるとは、言語道断です」
「ちっ!」

 高宗平は手を引き、一歩下がる。天佑は高宗平を見つめた。

「証拠ならあります。ここ二ヶ月ほど、高家と郭家は頻繁に交流されていますね?」
「郭家と我が家は親戚関係にある。何もおかしくはないだろう。それとも、吏部は官吏の人事だけでなく、親戚付き合いにまで口出しされるおつもりか」

 高宗平は不機嫌さを露わにする。

「ええ、仰るとおり、郭家と高家は親戚関係にあって親しくしていても不思議はありません。ただ、郭家の親しくしている錬金術師が奇妙な物を作っていることがわかりましてね。これです」

 天佑の合図にあわせ、鈴々が天佑に何かを手渡す。