「なんと恐ろしい。一体誰がそのようなことをしたのかはわかっているのか?」

 高宗平が険しい顔つきで、玲燕を問い詰める。

「反皇帝派の代表格であられます、劉(りゅう)様です。陛下が退けば、劉様の孫であらせられる皇子が皇位を継承されますから」
「劉殿が! 信じられない。なんということだ」

 高宗平は両腕を大きく広げ、大げさなほどに失望を露わにする。

 玲燕はその様子をじっと見守ると、おもむろに目を閉じ深呼吸する。
 そして、まっすぐに目の前の人を見据えた。

「話はまだここで終わりではございません」
「何? どういうことだ?」
 
 高宗平が怪訝な顔をする。

「犯人はもう一人います。……それは高様、あなた様です」
「なっ!」

 高宗平は大きく目を見開いた。

「あなた様は頻繁に摩訶不思議な色をした火の玉を出没させることにより、あたかも鬼火であるかのように見せかけた。本当の鬼火であれば大規模な祈祷を行うことになるのは自然の流れ。そして、もしも祈祷後にあやかし騒ぎが幾分か収まれば、あなた様は名声を得て、より一層の権力を得ることになります」