「確かに、その者が用いた方法は正攻法とは言い難いな。しかし、あいにく〝道具を認めない〟とは書いていなかった」
「しかしっ」

 潤王は片手を上げ、更に言い募ろうとした高宗平を制する。

「ところで高よ。今しがた、『正義の道を踏み外すような真似は断じて許すべきではない』と申したな。では、そなたは『正義の道』を踏み外したことがないと?」
「は?」

 高宗平は潤王の返しが予想外だったようで、怪訝な顔をした。

「もちろんでございます」

 高宗平は頷く。

「なるほど。……最近、皇城や外郭城では不思議な火の玉が現れ、天帝の怒りであると人々が恐れている。おぬしはそれを解決すべく、大規模な祈祷を行うべきだと主張していた。ところで、私や妃達が暮らす宮城ではその鬼火は目撃されない。なぜだと思う?」
「それは、偶然でございましょう」

高宗平は、なぜ今そんなことを、と言いたげに眉を寄せる。

「偶然ね。本当に? 天帝が怒っているのであれば、私がいる宮城にこそ鬼火があらわれそうなものだが?」
「…………」

 何も答えない高宗平から目を反らすと、潤王は玲燕へと視線を移した。