声の主は、玲燕がいなければ優勝だったはずの大男、黄家に仕える浩宇だった。

「力自慢の勝負にこのような小道具を使うとは、武の道に反する。俺は認めん」

 怒りで顔を赤くした浩宇は興奮気味に叫ぶ。

「その通りです。甘殿もこんないんちきを使うとは、落ちぶれられたものだ」

 続いてそう抗議したのは、黄家と同立一位だった高家の当主──高宗平だった。

「あなた達が認めるかどうかは、関係がありません」

 玲燕がふたりに対してきっぱりと言い切る。

「なんだとっ」
「お前、誰に向かって口をきいている!」

 それぞれが怒り、辺りに緊迫した空気が流れた。周囲で見物していた者達も、これはどうしたものかと騒めく。

「陛下。このような正義の道を踏み外すような真似は断じて許すべきではございません。甘殿もどういうおつもりだ!」

 高宗平は潤王の元に歩み寄ると、顔を赤くして玲燕の行った行為は不正だと訴える。そして、横にいる天佑を睨み付けた。

 潤王は高宗平と浩宇を見下ろし、ふむと頷いた。