見かねた天佑はすっくと立ち上がると玲燕の元に駆け寄る。玲燕は天佑に気付くと、薄らと額に滲んだ汗を拭ってにこりと微笑んだ。

「これは天佑様。いいところにいらっしゃいました。重りを載せるのを手伝って下さい。ひとりでは骨が折れる」

 そう言いながら、玲燕はまたひとつ重りを持ち上げ、バケツの中に置いた。

「ここ数日、菊花殿に籠もって何かを作っていたのはこれか?」
「はい、そうです。材料を集めてくださりありがとうございます」

 玲燕は朗らかに微笑む。

 この力試し大会の出場に際していくつかの必要な材料を玲燕から告げられた。それは、滑車や歯車や棒など、おおよそ何に使うのか予想の付かないものばかりだった。

「何斤載せる?」
「そうですね……。百五十斤ほど」
「百五十斤だと!?」

 これまでの最高記録が百三十斤なので、玲燕の要求した重さはそれを遙かに上回る。驚く天佑に対し、玲燕は落ち着いた様子でまた重りを持ち上げる。天佑は慌ててそれを取り上げてバケツに入れてやった。