「なんだと? 貴様、俺を高家に仕える浩宇と知っての発言か!」

 挑発されていることに気付いた大男が激高したように叫ぶ。

「知りません。興味もございませんので」

 事実、そんな男の名は天佑から渡された有力貴族のリストにはなかった。つまり、この男は玲燕の知らない男だ。

「貴様!」

 顔を赤くした大男が玲燕に掴みかかろうとしたそのとき、ドーンと銅鑼が鳴る。潤王が現れたのだ。その場にいた者達が、一斉に頭を下げる。玲燕もそれに倣い、頭を下げた。

「それでは、これより勝負を始める。ルールはひとつだけ、一番重い重りを床から三尺以上持ち上げ、十数えることができた者が優勝だ」

 潤王の横に建つ官吏の説明に、周囲から雄叫びが上がった。

「秀(しゅう)家、百斤」
「円(えん)家、九十斤」

 測定結果を記録する官吏(かんり)が大きな声で記録を叫ぶたび、大きな歓声が上がる。
 天佑(てんゆう)もその様子を、潤王のすぐそばで見守っていた。

「黄家と高家が同立一位か。この記録を破るのは難しいかもな」

 潤王は斜め後ろに控える天佑に話しかける。

「はい。次点とかなりの差があります」