そのとき、玲燕はあることに気が付いた。

「どうした?」
「よく見てください。劉家の錬金術師が関わったことが疑われるあやかし騒ぎの日は素早く横切ったという証言が多いです」
「確かにそうだな。気付かなかった」

 玲燕は顎に手を当てる。

「これはもしかして……」
「何か気付いたのか?」
「はい、天佑様。至急で調べていただきたいことがございます。もしかすると、力試し大会は絶好の機会になるかもしれません」
「絶好の機会?」
「はい。鬼火の謎を、多くの人々の前で明らかにして見せましょう」

 玲燕はそう言うと、自信ありげに笑みを深めた。


   ◇ ◇ ◇


 その日、皇城の中庭の周りには潤王主宰の力試し大会を見学しようと多くの人々で賑わっていた。
 中庭が見渡せる高い位置には潤王の席が用意されており、その周りには既にぐるりと臣下達が座っていた。更に、左右の物見席には本日特別に後宮を出ることを許された妃達が並び、華やかさを添えていた。

「すごい人達ね」

 玲燕は、集まった人々を見回す。そのとき、どんと背中を押されて前によろめいた。

「痛ったぁ」