玲燕は呆れた。犯人が捕まっているなら、自分がこんな格好をしてここにいる必要などないのに。なんですぐに教えてくれなかったのか。

「そう、捕まった。だが、おかしいのだ。日が合わない」
「日が合わない?」

 先ほども天佑は『日が合わない』と言っていた。

(一体何を仰っているのかしら?)

 玲燕が訝しげに眉を寄せると、天佑は続きを話し始める。

「劉家が贔屓(ひいき)にしていた錬金術師は随分と几帳面な性格をしていてね。何月何日に、どこで鬼火を飛ばしたかを事細かに竹簡(ちくかん)に記載していた。その一つひとつを今までの記録と照らし合わせたのだが、どうも日にちが足りない。これだ」

 天佑は背後の書棚から、書類を取りだして玲燕に差し出す。
 先ほどからしきりに『日が合わない』と言っているのは、鬼火が目撃された日の記録と劉家が贔屓にしている錬金術師から押収した記録が合わないということのようだ。

「劉家が錬金術師を複数人使っていたのでは?」