「李(り)空(くう)という男で、齢は五十歳近い。光琳学士院で最も権威ある錬金術師で、黄家と縁が強い。実は、鬼火の事件が発生したとき真っ先に光琳学士院に調査を依頼したのだが、李殿が率いる調査の結果、原因不明だと回答があった」
「光琳学士院に……」

 光琳学士院は光麗国において知識の腑とされる機関で、玲燕の父である最後の天嶮学士──秀燕が勤めていた場所でもある。

 初めて会ったとき、天佑は玲燕に『都の錬金術師では手に負えないことがあった』と言った。その都の錬金術師というのが光琳学士院に所属する錬金術師達なのだと玲燕は理解した。

「話は戻るが、黄家について怪しい動きがないかかなり調べたが、現在のところ鬼火に結びつく動きはない」
「なるほど」

 玲燕は腕を組む。

「次に怪しいのが、南の地域を治める名門貴族──劉(りゅう)家だ」
「劉家……」

 玲燕はこれまで頭に入れた各貴族の家系図を思い返す。