「そう怒るな。先ほども言ったとおり、今日か明日あたりに玲燕を訪ねて相談するつもりだったんだ。ただ、どうにも解せない点があってね」
「解せないこととは?」
「以前より、玲燕とは色々とは錬金術師あるいはそれに類する者が事件に関与している可能性について話していただろう? だから、これらの情報を調べた。この中で反皇帝派の者を洗えば、犯人に繋がると思ったのだ」
「繋がらなかったのですか?」

 玲燕は聞き返す。

「怪しい者に目星を付けて、内々に更なる調査をした。ひとり、これは、という者が浮上したのだが……、残念ながら日が合わないのだ」
「日が合わないとは?」
「つまりだな──」

 天佑は自身の頭の中を整理するように、ゆっくりと説明を始めた。

「調査の結果いくつかの家門が浮上した。例えば、黄(おう)家、郭(かく)家、高(こう)家などだ」
「黄家?」
「ああ、黄家は知っての通り、梅妃様のご実家だ。娘が陛下の妃であられるので動機はないように思えるが、現在光麗国で最も有力な錬金術師を囲っているのが黄家だ」
「その錬金術師はどのようなお方なのですか?」

 玲燕は興味を持って尋ねる。