「そう怒るな。多くの関係者を一気に集めるには、これが一番自然な流れだったのだ」
「それはわかっております」

 天佑は苦笑する。ぶっきらぼうに言い放つ玲燕は、結局天佑にどういう道具を使うのかを教える気はなさそうだ。

「ところで、天佑様。今日、蘭妃様から興味深い話を聞きました。蘭妃様のご実家の蓮家と、梅妃様のご実家の黄家は共に冶金産業に出資しているようです。冶金に関わっていれば、懇意にしている錬金術師がいるはずです。今回の鬼火に使われた方法も知っていたかもしれません」

「ああ、それなら、既に調べた。これだろう?」

 天佑は執務机の中から書類を取り出し、玲燕に差し出す。そこには、冶金産業に関わっている有力貴族の家門一覧と、懇意にしている錬金術師の情報が載っていた。蘭妃と黄妃の実家である連家と黄家もあった。

 玲燕はそれを見て、眉を寄せる。

「情報はしっかりと共有してくださらないと困ります。私がなんのためにこのように身分を偽り、妃としてここに潜入していると思っているのですか」

 玲燕の責めるような口調に、天佑は肩を竦める。