「このお触れを見る限り、道具の使用は禁止されていないのでしょう? 私でも優勝できるチャンスはあります」

 天佑は玲燕から紙を奪い取り、紙面を視線で追う。

「確かに道具については書かれていないな。だが、皆禁止だと思っていると思うぞ」
「でも、明記されておりません。告知されていない限り、そのような決まりはないはずです」
「いかにも、そうだがね。まさか、巨大なテコでも使うつもりか?」

 天佑は興味深げに聞き返す。口元に笑みを浮かべており、この展開を面白がっているようにも見える。

「巨大なテコは原理上投石装置と同じですから、操作をを誤ったときに周囲に被害を出してしまいますし、そもそも大きすぎます。ここは、バケツを使おうかと」
「バケツ? 塩水に沈めて浮力で持ち上げるか?」
「さすがは天佑様。すぐにその方法が思いつく方はそうそうおられません。ただ、その方法ですと、持ち上げられる重さに限度がありますし、服が濡れると風邪を引いてしまいますので違います」
「ではどうやって?」
「秘密でございます」

 ふいっとそっぽを向かれ、天佑は目を瞬(しばたた)かせる。