近年、冶金産業に力を入れる貴族がその収益から巨額の富を得ているのは有名な話だ。蘭妃の実家である連家が出資していたとしてもおかしくはない。

「ええ、そうよ。あとは、梅妃様のところも」

 蘭妃は梅妃とのやりとりを思い出したのか、嫌そうに顔を顰める。

「そうですか。ありがとうございます」

 玲燕は頷く。

(……大きな収穫ね)

 冶金産業に関わっているならば、錬金術師と懇意にしている可能性が高い。鬼火を偽装するために使われた方法も知っていたかもしれない。

「ところで蘭妃様。先ほど梅妃様が体調を崩されていると仰っていましたが、そうなのですか?」
「知らないけど、最近梅園殿を頻繁に医官が出入りしているのを目撃したって侍女達が言っていたわ」

 蘭妃は両手を挙げ、肩を竦めて見せる。

「へえ……」

 梅妃の体調については、天佑からは何も聞いていない。

(季節の変わり目の風邪かしら?)

 段々と深まる秋は、間もなく冬へと変わる。朝晩は特に冷えるようになってきたので、風邪を引いたとしても不思議はない。


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