しかし、この方法の場合比重を算出するために体積を知る必要があり、体積を計るには水に沈める必要がある。もしも鍍金が上手くできていない部分があれば、そこから内部が錆びてしまいかねない。高価な品なので、それをするのは気が引けた。

(では──)

 玲燕は懐を探り、常に持ち歩いている小箱を取り出す。

「それは何?」

 蘭妃は興味深げに、玲燕の手元を見る。

「羅針盤です」
「羅針盤? 方角を計るのかしら?」

 蘭妃は小首を傾げる。扇子で口元を隠しながらも、視線は羅針盤に定まっていた。
 一方の玲燕もじっと羅針盤の指す方向に注目した。針が左右に回転し、やがて一方向を指す。

「わかりました」

 玲燕は羅針盤から視線を上げ、蘭妃を見つめる。蘭妃は目を眇め、まっすぐに玲燕のことを見返してきた。

「鍍金の品ですが、こちらでございます」

 玲燕は四つの中から、ひとつを指さす。

 すると、蘭妃の少し釣り気味の目が大きく見開いた。

「あら、すごいわ。どうしてわかるの?」