木々の向こうにある大きな池には、鯉が悠然と泳いでいる。そして、池の中央にある小島には阿(あずまや)があり、その小島に渡るための橋があった。
(あまりこちらには来たことがなかったけど……。後宮は、皇帝と皇妃様の私的な空間だけあってどこも美しいわね)
蘭妃が住んでいるのは香蘭殿はこの後宮の中でも大きな殿舎だ。蘭妃の父親は国内有数の大貴族──連家の当主であり、この後宮内の妃としては最も実家の身分が高い。そのため、殿舎もよい場所をあてがわれているのだ。
たった数人のためだけに整備されたその美しい庭園を通り過ぎ、玲燕は蘭妃がいる香蘭殿へと向かった。
「恐れ入ります。蘭妃様のお呼び出しにより、菊妃様が参ったとお伝え下さい」
香蘭殿の前で、鈴々が女官に声を掛ける。襦裙姿の宮女の襟元には蘭の花が刺繍されていた。
「まあまあ、菊妃様でいらっしゃいますか? お待ちしておりました」
本日玲燕がここに来ることは既に女官達に周知されていたようで、すぐに建物の奥へと案内された。
(あまりこちらには来たことがなかったけど……。後宮は、皇帝と皇妃様の私的な空間だけあってどこも美しいわね)
蘭妃が住んでいるのは香蘭殿はこの後宮の中でも大きな殿舎だ。蘭妃の父親は国内有数の大貴族──連家の当主であり、この後宮内の妃としては最も実家の身分が高い。そのため、殿舎もよい場所をあてがわれているのだ。
たった数人のためだけに整備されたその美しい庭園を通り過ぎ、玲燕は蘭妃がいる香蘭殿へと向かった。
「恐れ入ります。蘭妃様のお呼び出しにより、菊妃様が参ったとお伝え下さい」
香蘭殿の前で、鈴々が女官に声を掛ける。襦裙姿の宮女の襟元には蘭の花が刺繍されていた。
「まあまあ、菊妃様でいらっしゃいますか? お待ちしておりました」
本日玲燕がここに来ることは既に女官達に周知されていたようで、すぐに建物の奥へと案内された。